こじんじょうほう

ここでは普通の話しかしません

ログは流れる、ログは残る

急に思い出したので23、4年前の話をする。

当時まだ高校生だった私はインターネット経由で知り合った、顔も本名も知らないけれど近況だけは把握している不思議な関係の人たち数名と、お互いのホームページを行き来してはBBSにコメントを残しあうという交流をおこなっていた。時代的にはテキストサイト全盛期よりもさらに少し前、今と違ってある程度HTML記法に精通していなければ個人ホームページを持てなかった頃だ。

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円盤を投げる

大人の遊びとは、夜のキャバレーに繰り出すことでもなければ真っ昼間から焼酎を呑むことでもなく、休日の午前に荒川のほとりでフリスビーを投げ合うことだった。そんなことは学校で習わなかったし、40年近く生きてきて誰も教えてはくれなかった。まだまだ世の中には知らないことが多くある。

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受難ボーイ

シーズンにやや遅刻気味でやって来て、やる気を見せることで必死に遅れを取り戻そうと奮闘した健気な台風24号が、まさしく風のように過ぎ去った翌日の朝…に気付けていれば、もう少しタイムリーな面白さもあったと思う。

「面白さ」を主眼にしている段階で人生をおろそかにしていると言われがちだ。他人の不幸が蜜の味だというのなら、こっちから自家製蜂蜜を喰らわせに行ってやるぞくらいのガッツがある。なぜそんなものが自分に備わっているのか、歪んだサービス精神か、正気を維持するための安全弁か、神様が取り除きそびれた初期不良か。

そんなことはいい、台風の話だ。台風の日はほぼ外に出かけなかった。入っていた予定はすべて向こうからキャンセルとなり、出歩こうにも夜20時を過ぎれば交通機関も動きを止めている。実家に向かう最終バスが20:10に出るような田舎で育ったものだから、このくらいは不便でもなかった。とにかく雨と風の音に耳を塞ぎながら、とはいえ轟音の中で眠るには神経が昂っていたりもして、なんのかんので午前3時ごろまで起きていた記憶はあるのだった。

翌朝、寝ぐせのついた頭髪を洗い流そうと蛇口をひねったが、水しか出なかった。

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サマーエモーション

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所狭しと提灯が並び、盆踊りの櫓が組まれた昼下りの小さな公園で缶の緑茶を飲んでいると、それだけで夏になってしまう。

いうまでもなく今は夏だし、すぐそこの業務スーパーで買った29円の緑茶は常温で、日陰も日向も無差別にじりじりと照らす太陽の無慈悲に額からは抗議の汗が垂れ落ちるばかりなのだが、なんというか夏の最大公約数?みたいなものを感じている。缶を傾ける、ぬるくて味のついた水分が喉の奥へ流れ落ちていく。

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